スーパーマーケットの畜産売場(精肉コーナー)は、社員からアルバイトの募集までよく行われていますが、実際の仕事や取扱品目にはどんなものがあるのだろう?と思った方へ、「畜産売場・精肉売場」の取扱商品から仕事・職務内容について詳しく説明します。
割と地域性が高く場合によっては売上が大きく変化する売場です。
畜産・精肉部門の取扱商品(取扱品目)
畜産・精肉売場の取扱商品・品目は想像出来ると思いますが、スーパーマーケットによっては異なることがあります。
畜産・精肉部門の取扱商品(取扱品目)

畜産(精肉)コーナーの取扱商品(取扱品目)は、お肉やお肉に関連した商品が基本です。ただしスーパーマーケットでは水産コーナーでも3~5つのカテゴリーに分類していることが多くなっています。
- 豚肉:一般的に一番売れる肉
- 牛肉:売れる店と売れない店の差が激しい
- 鶏肉:コンスタントに売れる
- 肉加工品:味付け肉等、ひき肉やステーキブロックを含める場合も
スーパーマーケットで差がある畜産・精肉コーナーの取扱品目

スーパーマーケットによっては畜産・精肉コーナーの取扱商品だったり、取扱商品ではなくなるものがあります。
- ハム・ソーセージ等の加工肉製品:大手を中心に日配の取扱が多い
- 冷凍肉:パッケージ化されたものは日配の取扱の場合もあり
- 一部調味料・タレ類
- 一部惣菜関係
ハム・ソーセージ・ベーコン、最近だとチキンナゲット等の加工肉でパッケージ化されているもの(丸大や日本ハム、伊藤ハム等メーカーが作っているもの)はイオンやイトーヨーカドー等大手を中心に日配が担当していることが多いですが、中小のスーパーマーケットだと畜産売場の取扱商品となっていることがあります。
ただし量り売り(グラム売り)および店内でパック詰めしているハムやソーセージは畜産売場の取扱が基本です。イオンやイトーヨーカドーでもパッケージ化していないパック詰めで販売しているものは畜産売場の担当となっています。
焼き肉のタレ、煮豚のタレは一部畜産売場の取扱になっていることが多いです。加工食品(グロッサリー)の取扱との差は、ほとんどの場合はメーカーによります。
例えばエバラは加工食品だけどモランボンやダイショーは畜産売場で取扱う等、スーパーマーケット(会社)において、商品部単位でメーカーによって区分していることはよくあります。
また畜産コーナーで対面販売をしている店舗では一部の惣菜は畜産売場が担当していることがあります。
畜産売場と他の売場との大きな違い

畜産売場において他の食品売場と大きく異なる場合があります。それは大型のスーパーマーケットを中心に対面販売コーナーがあることです。
冷蔵ケースに並べられた少し良いお肉を中心に欲しい重さ(グラム数)を言って包んでもらうという販売方法です。
最近だとスーパーマーケットでも惣菜コーナーでも対面販売は増えてきていますし、人が利用が多い駅ビルの中の惣菜屋さんでも対面販売は普通に行われていますが、スーパーマーケットで圧倒的に多いのは畜産コーナーの対面販売です。
対面販売をしている店舗はそれだけ畜産売場の売上構成比が高いことがわかります。ただし全国的には畜産コーナーの対面販売を行っているスーパーマーケットは減ってきています。
また惣菜コーナーの商品の量り売りを畜産コーナーが兼ねているということも企業規模として中小のスーパーマーケットではたまにあります。
なお大手スーパーマーケットを中心に対面販売をしている場合、実はテナントが運営していることもあります。
畜産・精肉コーナーの仕事内容
社員・パート・アルバイトによって仕事内容は変わりますが、一般的な社員とパート・アルバイトの仕事内容です。
畜産の社員の仕事内容
基本的に社員の仕事は、計画販売と発注等ですが、主な仕事は下記となります。
- 販売計画の作成(月間・週間)
- 食品全体・店全体で行われる会議への出席
- 商品部が主催する会議への出席
- レイアウト作成
- 商談(主に中小規模のスーパー)
- 書類関係の仕事全般
- 演出
- 発注業務
- 商品の店出し(商品を並べる)
- 値下げ・見切り業務
- 廃棄業務
- 管理業務(在庫管理・冷蔵ケース等の温度管理 等)
- POP作成
- お客さん対応(接客・対面販売含む)
- クレーム処理
- 加工処理(肉のスライスや味付け肉の製造、パック詰め等)
- 清掃業務
水産や農産だと市場にいって仕入れということが発生することが稀にありますが、畜産だとほぼありません。
スーパーマーケット(会社)によっては、POP作成業務は一切行わない・行わせてもらえない場合もあります。
販売計画は52週マーチャンダイジングという考え方の元、エンドや平台でどういう商品を売り込むのか?ということを中心に計画書を作成します。ただし会社本部の指示通りに行うだけの会社もあり、それだと仕事そのものにあまり面白さを感じないかもしれません。
商談は大手スーパーマーケットの場合は、まずすることはありません。むしろ中小規模のスーパーマーケットの方が行います。というのも、大手スーパーマーケットの場合、商談は商品部の仕事であり店舗単位で行うことが禁止されている場合もあるからです。
どうしても商談がしたい場合は、商品部経由で依頼することが多くなっています。
パートの仕事内容
パートの仕事内容は、スーパーマーケット(会社)によりかなり異なります。
中規模のスーパーマーケットだと畜産を担当する社員が1人のみということは普通にあり、社員の代行として実質的に社員と同じ内容の仕事を求められることがあります。
ただし一般的なパートの仕事内容は下記のことが多いです。
- 食品全体・店全体で行われる会議への出席(社員不在時)
- 発注業務
- 商品の店出し(商品を並べる)
- 値下げ・見切り業務
- 廃棄業務
- 管理業務(在庫管理・冷蔵ケース等の温度管理 等)
- お客さん対応(接客・対面販売含む)
- 加工処理(肉のスライスや味付け肉の製造、パック詰め等)
- 清掃業務
ほとんどは加工処理と店出しがメインとなります。
アルバイトの仕事内容
アルバイトの時間帯・契約時間にもよりますが、基本的には社員とパートのフォロー的業務ということが多くなっています。
具体的には下記の仕事が多いです。
- 商品の店出し(商品を並べる)
- 値下げ・見切り業務
- 廃棄業務
- 管理業務(在庫管理・冷蔵ケース等の温度管理 等)
- お客さん対応(接客含む)
- 加工処理(パック詰め等)
- 清掃業務
変化する畜産売場の仕事
スーパーマーケットの中でここ20~30年で一番売場のあり方が変わったのが畜産売場かもしれません。
というのも畜産コーナーに社員は配置せずパート・アルバイトのみで行っている店舗が増えているからです。
社員は日配や惣菜売場の社員がある程度面倒を見るというような形にしていることもあります。
というのも肉のスライス等、店内加工をする店舗が年々減ってきており、既にパック詰めされた肉だけを店頭に並べるだけというスーパーマーケットは増えてきています。
畜産売場の売上が悪い内陸部で客層が比較的高齢化している売場面積が小さな店舗では見かけることもありますし、ミニスーパーでは普通のことです。
その理由は肉の加工はプロセスセンターと呼ばれる食品加工センターでより集中的に行うようになったからです。
そのため、畜産売場の社員の需要は減少傾向にあります。
畜産という仕事の将来性や店での貢献度
畜産(精肉)という仕事の将来性や店での貢献度をチャート図にしてみました。
畜産担当の出世度
畜産に配属された場合、今後の出世にどれぐらい影響するか?と言えば影響はありません。
たまにスーパーマーケットの食品の花形部署は惣菜売場(デリカ)という人もいますが、それは小型のスーパーマーケットのことであり、中規模~大規模だと関係ありません。
なお上昇志向が強い場合は、如何に売場を目立たせて売上を大きくするか?ということが大切です。詳しくは、畜産の売上で説明します。
ただし店舗によっては、閑職と言えないこともあります。
畜産担当の転職有望度
同じスーパー業界への転職の場合、他の部署よりはやや不利になる傾向にあります。「変化する畜産売場の仕事」でも説明しましたが、プロセンスセンターでの加工がメインになり、畜産売場の社員を減らす傾向にあるからです。
もちろん肉加工の技術をしっかりと覚えていればプロセスセンターや飲食店を中心に需要はあるので、他業種への転職なら困ることは少ないです。
また畜産加工品のメーカーにも転職は比較的有利です。主に営業職となりますがスーパーマーケットで畜産を担当していたという強みがあります。
畜産担当の大変さ
何を持って大変と見るか?ということもありますが、水産・惣菜売場に比べればまだマシな部分はありますが、日配や加工食品、農産よりは匂いや汚れが酷いので大変な職場にはなっています。
畜産担当の面白さ
何に面白さを見出すか?ということにもよりますが、技術を磨くことに面白みを感じられる人なら面白いと思います。
ただ職人的な方向へ進みすぎるとマーケティング的な面白さに興味が持てなくなり、出世が厳しくなるかもしれません。
畜産の売上
畜産の売上は一般的な食品メインのスーパーマーケットにおいて7部門の中で約13~14%くらいとなっています(7部門は下記の図を参考)

青果 | 水産 | 畜産 | 惣菜 | 日配品 | 加工食品 | 非食品 | 合計 |
16.3% | 11.4% | 13.3% | 10.1% | 17.9% | 25.5% | 5.4% | 100.0% |
上記が一般的な食品メインの売上構成比です。
ただし上記は平均値でありスーパーマーケットの地域性・特異性によっては惣菜に負けてしまうことがありますが、逆に地域特性によっては農産・日配品よりも売上高が多い場合もあります。
生鮮4部門の中で最も地域性・特異性で売上幅が揺れるのが畜産とも言われることがあります。
お肉なんてどこでも一緒だから揺れ幅は少ないのでは?と思うかもしれませんが、内陸部で畜産業(養鶏や養豚)を行う人が多い地域だと肉はあまり売れませんし、しかも高齢者多い地域になると肉より魚を好む傾向にあるので、肉が全く売れない店舗というのは存在します。特に牛肉のように高いと牛肉のカテゴリーは赤字という店舗も存在しています。
水産も地域差はありますが畜産(肉)よりは少ないように思います。
畜産の粗利
畜産は粗利は高めになる傾向にありますが、プロセスセンターを利用する店舗が増えるともう少し粗利は減っていく傾向にあります。
平均すると各部門ごとの粗利率は下記のようになっています。
農産 | 水産 | 畜産 | 惣菜 | 日配 | 加工食品 | 非食品 |
22.80% | 28.10% | 28.40% | 36.60% | 22.80% | 19.30% | 20.50% |
店舗ごとの戦略・戦術にもよりますが、基本的には畜産は粗利を確保する方向のところが多いです。
粗利を下げて集客をするのなら農産か加工食品というところが多いですが、最近だとドラッグストアが日配品で粗利を下げて集客することを行うことが増えたので、スーパー各社も対応を考えています。
畜産の営業利益
畜産は水産や農産同様、加工業務が多い売場でしたが、プロセスセンターの普及に伴い加工業務が減り、人件費も縮小傾向にあるので、営業利益は増えている傾向にあります。
畜産の人件費
プロセスセンターの普及に伴い、畜産部門の人員は減らされている傾向にありますが、肉がよく売れる地域だと店内加工の方が利益率が上がる場合もあり、店舗によって人件費はかなり異なります。
対面販売があるような店舗なら人件費は高くなる傾向にあります。
畜産に関する補足事項・Q&A
上記で説明してきたこと以外で畜産・精肉部門に関する疑問点に思うであろうことや補足事項です。
- Q畜産売場は指を切ったりして危険と聞いたけど
- A
肉を薄切りにするスライサーで大きな怪我をしたという話はたまに聞きますが、今はかなり怪我をする人は減っています。スライサーでの安全対策は日々進化しています。
古い機械を使っているところや注意不足による怪我は一定数ありますが、刃物恐怖症でもない限りは大丈夫です。
- Q畜産は特別手当はないの?
- A
血がついたり決して楽な職場ではない畜産売場なので、特別手当(畜産担当手当や時給のアップ)を出している会社はあります。ただしプロセスセンターの普及に伴い減ってきているようです。またイオン等、他の部署と同じ給与というところも中にはあります。
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