スーパーマーケット業界にとどまらず小売業界であれば非常に重要視されるものとして粗利・荒利(ともに「あらり」と読み同じ意味)があります。
粗利・荒利について
粗利・荒利、ともに「あらり」と読み同じ意味で使いますが、スーパーマーケット業界だと「荒利」を使うことが多いので、以後「荒利」で説明していきます。
荒利とは?荒利益・荒利益高とは?

荒利とは、売上高から原価(仕入金額・売上原価)から差し引いた利益のことです。もう少しわかりやすく言えば売価(売れた価格)から原価を引いた単純な利益のことです。
上記の図の通り、りんご1個の原価が140円、売価が200円だとすれば単純な利益=荒利は60円となります。
この場合の60円の荒利のことを荒利益、金額のことを荒利益高と言います。

仮に200円だと売れないので160円に値下げして販売した場合、荒利は20円となります。
同じりんごを100個仕入れて、90個は200円で売れたけど10個は値下げして160円で販売した場合だと下記のようになります。
- 原価140円が100個で原価合計14000円
- 200円で90個売れたので売上は18000円
- 160円で10個売れたので売上は1600円
- 売上18000円と1600円を足して19600円
- 売上19600円から原価14000円を引いて荒利益高は5600円
荒利率・荒利益率とは

荒利益率は、売上に対しての利益の割合のことです。上記の図の通り売価200円に対して単純な利益である荒利益高は60円なので、割合は30%となり、荒利益率は30%、原価率は70%となります。
荒利益率の計算方法は下記のいずれかです。
- 1ー(原価÷売価)
- 荒利益高÷売価
- (売価-原価)÷売価
上記にりんご売価200円・原価140円・荒利益高60円を当てはめてみると下記のようになります。
- 1ー(140÷200)=0.3=30%
- 60÷200=0.3=30%
- (200-140)÷200=0.3=30%
もしここで「0.3=30%」の意味がわからない場合、小学生で並ぶ分数や百分率で勉強についていけなくなったかと思います。
今からでも間に合うので、スーパーマーケットで働くことを考えていたら最低限この百分率(パーセント)は覚えるようにしてください。
なお荒利率と荒利益率は基本的に同じ意味ですが、荒利益率は営業数値として言うことが多く、荒利率は現場の数値として使うことが多いです。
例えば、魚を仕入れて売る場合、現場だとどれぐらいの利益を乗せて売るか?と考えた時にセールなら20~25%の荒利率になるように売価を設定する・通常なら30~40%で売価を設定するというようなルールが設定されていることがあります。
本来は値入率(後述)で考えるべきですが、見切りなども考えるので、トータルでの荒利率が落ち着くであろう地点を考えて荒利率の着地点を想定しています。
ただし会社・スーパーマーケットによってどう言うか異なっています。
マイナス荒利とは

マイナス荒利とは、荒利がマイナスになる状態のことです。例えば原価140円、売価200円のりんごが売れ残ってしまったので、半額処分として100円にした場合、原価よりも安い価格になるため、マイナス荒利になる訳です。
もしこういう状態が多くなれば、店の利益が出なくなってしまうので、営業として成り立ちません。だから出来るだけ、利益が残る状態で販売したい訳です。
ただし売れ残って捨てるよりはマシということで処分のためにマイナス荒利で販売することがあります。
値入と荒利の違い
荒利と似た意味合いで「値入」という言葉があります。
原価140円のりんごを200円で売る場合、値入率は30%なので、荒利率と同じだ…と思うかもしれません。
しかし違いがあります。
- 売る前に想定した利益率が値入率
- 売った後に確定した利益率が荒利率
売る前が値入、売った後が荒利となります。いくら値入がよくても全部半額で販売したら荒利は低くなるかマイナスになるので、経営が成り立たなくなることはわかりますよね。
荒利・荒利率がスーパーマーケットで大切な理由
スーパーマーケットにおいて、荒利・荒利率は非常に重要な数値です。
一次的な数値として重要な荒利
荒利は一次的な利益の目安となるため大切な数値とされています。例えばある部門(水産売場とか畜産売場とか)の人件費が月間で300万円だったとします。
もし月間の荒利益高が仮に300万円を切っていたら、すぐに利益が出ていないことがわかりますよね。
水道光熱費や販促費、設備の維持費等を考えたら人件費が300万円なら最低でも荒利益高はざっくりと400~500万円はないと厳しいということがわかると思います。
厳密には損益分岐点という数値を出して一次的には管理しますが、ここでは損益分岐点についての説明は省略します。
荒利ミックスという考え方が営業的に重要
スーパーマーケットに限らず小売業では、しばしば「荒利ミックス」ということが話題になります。
荒利ミックスとは、すべてで荒利を確保するのではなく、戦略的に荒利の低い商品群を作ってでも集客し部門全体・そして店全体で利益および売上を確保しようとする戦略です。
例えばよくあるのが、卵の特売です。
卵1パック、以前なら100円・今なら150円くらいで広告の品として出して、卵を買いに来てくれた人がほかのものを購入してくれればトータルで利益および売上を確保しようとするような方法です。
ただし近くに競合店・ライバル店があって、そちらの方が卵以外が安い場合は、卵だけ買われて他のものが買われなくて、荒利ミックスとして成り立ってないなんて話はよく聞きます。
荒利が少ない商品を用意しつつ、荒利の多い商品を一緒に購入してもらうという戦略で考えないと失敗します。
スーパーマーケットの顔と言えば一般的には「農産・青果コーナー」です。だから「農産・青果コーナー」では荒利を下げてでも安く売って、奥に進んで水産・鮮魚コーナーや畜産・精肉コーナーで荒利の高い高額な商品を買ってもらうという方法は、割と理にかなっています。
また荒利ミックスで安く売るのは比較的低単価の商品で、荒利を確保するのは比較的高単価の商品と考えることが大切です。
言い方は悪いですが「エビで鯛を釣る」という考え方が近いです。
そして荒利率よりも荒利額が多くなるように考えます。
以上、荒利・荒利益額・荒利率についてでした。
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