スーパーマーケットの水産売場(鮮魚コーナー)は、社員からアルバイトの募集までよく行われていますが、実際の仕事や取扱品目にはどんなものがあるのだろう?と思った方へ、「水産売場・鮮魚売場」の仕事・職務内容について詳しく説明します。
割と地域性が高く場合によっては売上が高くなることもある売場です。
水産・鮮魚部門の取扱商品(取扱品目)
水産・鮮魚売場の取扱商品・品目は想像出来ると思いますが、スーパーマーケットによっては異なることがあります。
水産・鮮魚部門の取扱商品(取扱品目)

水産(鮮魚)コーナーの取扱商品(取扱品目)は、魚や魚に関連した商品が基本です。ただしスーパーマーケットでは水産コーナーでも3~5つのカテゴリーに分類していることが多くなっています。
- 鮮魚(生魚):魚の形をしたものから切り身まで
- お刺身:中規模以上のスーパーなら店内で加工・調理するのが基本
- 塩干魚・漬魚:干物やみりん・味噌などで漬けた魚・魚卵も含む
- 冷凍魚:冷凍された魚介類
海藻類は生食用ならお刺身のカテゴリーになっていたりします。
スーパーマーケットで差がある水産・鮮魚コーナーの取扱品目

スーパーマーケットによっては水産・鮮魚コーナーの取扱商品だったり、取扱商品ではなくなるものがあります。
- お寿司:スーパーによっては惣菜コーナーの場合も
- 練物:バラ売りの練物(はんぺんやさつま揚げ等)は水産取扱の場合も
- 鰻の蒲焼:惣菜コーナーの場合も・水産・惣菜コーナー両方の場合も
- 冷凍魚(パック品):日配での取扱の場合も
- 一部調味料類
お寿司は惣菜コーナーで扱う場合がほとんどですが、一部のスーパーマーケットでは水産コーナーでの取扱になっていることもあります。
練物、いわゆるはんぺんやさつま揚げ等の魚などの練って作るものでバラ売りなどは水産コーナーでの取扱という場合もあります。
鰻の蒲焼は水産コーナーの場合もあれば惣菜コーナーの場合もありますし、両方で取扱う場合もあります。ただ水産コーナーのものは再加熱が基本、惣菜コーナーはそのままでも食べられるというような違いがある場合もあります。
調味料というのは例えば「煮付けのタレ」や「カルパッチョの素」といった魚介類用の味付け用のものです。基本は加工食品・グロッサリーですが、水産部門で取り扱っている場合もあります。
形態・状態で扱いが変わる場合も

小さなスーパーマーケットだと仕入れた魚が新鮮ならそのままお刺身に加工することもありますが、大手スーパーだと魚を丸ごとつかってお刺身にするということは無い場合もあります。
というのも仕入れ用途で加工・調理の有無が決められている場合があるからです。特に最近は寄生虫などにも厳しく万が一のことを考えて加工しないように指示が出ている場合もあります。
カツオやブリなんて、数本おろしていればだいたい寄生虫(主にアニサキス)を見つけますから…
また3~5つのカテゴリーに分かれていると書きましたが、例えば明太子は塩干魚のカテゴリーだけど、生のタラコは生魚・鮮魚のカテゴリーで扱うということもあります。
水産・鮮魚コーナーの仕事内容
社員・パート・アルバイトによって仕事内容は変わりますが、一般的な社員とパート・アルバイトの仕事内容です。
水産の社員の仕事内容
基本的に社員の仕事は、計画販売と発注等ですが、主な仕事は下記となります。
- 販売計画の作成(月間・週間)
- 食品全体・店全体で行われる会議への出席
- 商品部が主催する会議への出席
- レイアウト作成
- 商談(主に中小規模のスーパー)
- 書類関係の仕事全般
- 演出
- 発注業務
- 商品の店出し(商品を並べる)
- 値下げ・見切り業務
- 廃棄業務
- 管理業務(在庫管理・冷蔵ケース等の温度管理 等)
- POP作成
- お客さん対応(接客含む)
- クレーム処理
- 加工処理(魚をおろしたり刺身を作ったり、パック詰め等)
- 仕入れ
- 清掃業務
日配やグロッサリーではまず仕入れという業務は発生しませんが、水産や農産に限って言えば仕入れという業務が発生することがあります。
近隣の市場や契約している漁船まで買付に行く・仕入れに行くということを行っているスーパーマーケットもあります。
魚はどうしても地場のモノ、新鮮なモノが売れる傾向にあるので、通常の発注で仕入れられる商品のみでは売上が取れなかったり、他のスーパーマーケットとの差別化が出来ないためです。
他の業務について、例えばスーパーマーケット(会社)によっては、POP作成業務は一切行わない・行わせてもらえない場合もあります。
販売計画は52週マーチャンダイジングという考え方の元、エンドや平台でどういう商品を売り込むのか?ということを中心に計画書を作成します。ただし会社本部の指示通りに行うだけの会社もあり、それだと仕事そのものにあまり面白さを感じないかもしれません。
商談は大手スーパーマーケットの場合は、まずすることはありません。むしろ中小規模のスーパーマーケットの方が行います。というのも、大手スーパーマーケットの場合、商談は商品部の仕事であり店舗単位で行うことが禁止されている場合もあるからです。
どうしても商談がしたい場合は、商品部経由で依頼することが多くなっています。
ただし仕入れを任せれている場合は、商談も行う場合があります。
パートの仕事内容
パートの仕事内容は、スーパーマーケット(会社)によりかなり異なります。
中規模のスーパーマーケットだと農産を担当する社員が1人のみということは普通にあり、社員の代行として実質的に社員と同じ内容の仕事を求められることがあります。
ただし一般的なパートの仕事内容は下記のことが多いです。
- 食品全体・店全体で行われる会議への出席(社員不在時)
- 発注業務
- 商品の店出し(商品を並べる)
- 値下げ・見切り業務
- 廃棄業務
- 管理業務(在庫管理・冷蔵ケース等の温度管理 等)
- お客さん対応(接客含む)
- 加工処理(魚をおろしたり刺身を作ったり、パック詰め等)
- 清掃業務
ほとんどは加工処理と店出しがメインとなります。
スーパーマーケットで10年20年以上勤務しているベテランのパートの人が多いのも水産の特徴です。というのも刺身の加工が出来る人は重宝されるので、辞めないように説得され続けるからです。
アルバイトの仕事内容
アルバイトの時間帯・契約時間にもよりますが、基本的には社員とパートのフォロー的業務ということが多くなっています。
具体的には下記の仕事が多いです。
- 商品の店出し(商品を並べる)
- 値下げ・見切り業務
- 廃棄業務
- 管理業務(在庫管理・冷蔵ケース等の温度管理 等)
- お客さん対応(接客含む)
- 加工処理(パック詰め等)
- 清掃業務
職人さんやシルバーアルバイトもいる職場
水産売場には職人さんや職人だったシルバーアルバイトの人がいる場合も多いです。
魚をおろす・お刺身にするという作業は経験が必要になるので、開店したばかりのお店では割と見かけることもあります。
職人的な技術を覚えられる水産
魚を売物レベルで加工するという技術はすぐには身につけられるものではありません。カツオやブリ等の魚を切り身・サク(冊)におろすくらいなら半年から1年もあれば覚えられますが、鯛やヒラメといった魚になると1年以上かかる場合も出てきます。
更に刺身になると1年くらいはかかってきます。
大手スーパーならそういう業務を覚えられることもあります。水産で2年以上魚介類の加工業務に携われば、調理師試験も受けられることもあり、水産売場で経験を積んで調理師試験を受けるという人もいます。
お客さん対応(接客含む)
売場で商品を陳列することが多いため、どうしてもお客さんに話しかけられて対応・接客は発生します。
基本的には商品の場所を聞かれて案内することが8割以上ですが、迷子の対応や体調不良になった方への対応、クレームを受けるということもあります。
水産という仕事の将来性や店での貢献度
水産(鮮魚)という仕事の将来性や店での貢献度をチャート図にしてみました。
水産担当の出世度
水産に配属された場合、今後の出世にどれぐらい影響するか?と言えば影響はありません。
たまにスーパーマーケットの食品の花形部署は惣菜売場(デリカ)という人もいますが、それは小型のスーパーマーケットのことであり、中規模~大規模だと関係ありません。
なお上昇志向が強い場合は、如何に売場を目立たせて売上を大きくするか?ということが大切です。詳しくは、水産の売上で説明します。
水産担当の転職有望度
同じスーパー業界への転職の場合、水産は募集割合が高いため転職もしやすい部門です。
特に刺身まで作れるようになっていればより高くなります。
他業種への転職であれば、刺身が作れるレベルまでになっていたら飲食店ならいくらでも見つかります。
また水産加工品のメーカーにも転職は比較的有利です。主に営業職となりますがスーパーマーケットで水産を担当していたという強みがあります。
水産担当の大変さ
何を持って大変と見るか?ということもありますが、実際に水産を1年担当した経験からだとスーパーマーケットの中で惣菜売場と双璧をなすくらい大変な職場です。
魚をおろす・加工するということは、魚の血や鱗が飛び散りますし、着ているものに匂いもかなりついてきます。
普通に洗濯しても匂いは中々落ちませんし、血等の汚れも中々いちません。
また冷凍庫に何度も入ったりするので、冷え性の人にはキツいかもしれません。
そしてずっと長靴を履いているので、水虫にもなりやすいです。魚を切る・刺身を切る時は手を丁寧に洗うので、冬場はアカギレにもなってきます。
水産担当の面白さ
何に面白さを見出すか?ということにもよりますが、技術を磨くことに面白みを感じられる人なら面白いと思います。
ただ職人的な方向へ進みすぎるとマーケティング的な面白さに興味が持てなくなり、出世が厳しくなるかもしれません。
水産の売上
水産の売上は一般的な食品メインのスーパーマーケットにおいて7部門の中で約11~12%くらいとなっています(7部門は下記の図を参考)

売上は7部門の中では真ん中くらいになっていることが多いです。
青果 | 水産 | 畜産 | 惣菜 | 日配品 | 加工食品 | 非食品 | 合計 |
16.3% | 11.4% | 13.3% | 10.1% | 17.9% | 25.5% | 5.4% | 100.0% |
上記が一般的な食品メインの売上構成比です。
スーパーマーケットの地域性・特異性によっては惣菜に負けてしまうことがありますが、逆に地域特性によっては農産・日配品よりも売上高が多い場合もあります。
出世志向が強いのなら農産・日配以上の売上規模を目指してみるのが良いでしょう。
ただし地域特性によっては本当に水産品が売れない店舗もあります。街で漁業関係で働く人が多いと水産の売上は落ちます。内陸部で客層の年齢が高いと農産以上に売れることもあります。
水産の粗利
水産は粗利は高めの傾向にあります。というのも加工作業が多く人件費がかかるので、粗利を高くしないと赤字になってしまうためです。
平均すると各部門ごとの粗利率は下記のようになっています。
農産 | 水産 | 畜産 | 惣菜 | 日配 | 加工食品 | 非食品 |
22.80% | 28.10% | 28.40% | 36.60% | 22.80% | 19.30% | 20.50% |
店舗ごとの戦略・戦術にもよりますが、基本的には水産は粗利を確保する方向のところが多いです。
粗利を下げて集客をするのなら農産か加工食品というところが多いですが、最近だとドラッグストアが日配品で粗利を下げて集客することを行うことが増えたので、スーパー各社も対応を考えています。
水産の営業利益
水産は日配やグロッサリーに比べると作業する人員が多い分、営業利益は少なくなる傾向にあります。
しかし水産売場が無いスーパーなんて魅力がないため、赤字にならなければというスーパーマーケットも一部あるそうです。
水産の人件費
水産は技術を持った人を雇うことが必要になり、他の売場よりも人件費は大きい傾向にあります。
その分、売上を確保するために店舗や会社によっていろいろな工夫をしています。例えば加工の手間がかからない塩干魚や冷凍魚の売上構成比を上げるというのは、どこのスーパーマーケットでもある程度は考えられていますが、差別化も難しい状況です。
水産に関する補足事項・Q&A
上記で説明してきたこと以外で水産・鮮魚部門に関する疑問点に思うであろうことや補足事項です。
- Q水産は特別手当は無いの?
- A
他の部署よりもキツいことが多い水産売場なので、特別手当(水産担当手当や時給のアップ)を出している会社はあります。ただしイオン等、他の部署と同じ給与というところも中にはあります。
包丁で怪我をする割合も多いので、本来なら他の部署よりも給与は高くあるべきだとは思います。
- Qスーパーに就職するけど水産売場になりたくない場合は?
- A
中小ならある程度は要望を受けてもらえると思いますが、大手だとその時の状況次第で水産売場担当にさせられることはあります。
例えば店舗に3名配属となった時に1人が突然就職辞退になって、その人が水産配属の予定だった場合、残り2名のうち1人を水産配属の予定ではなかったとして且つ当初から水産だけはしたくないと言っていても水産に配属させらるということはありえます(私がそうです)。
- Q左利きだから水産担当にはさせられないよね?
- A
左利きでもいろいろな理由によって水産担当に配属させられることはあります。実際に私がそうです。
ただし教える人が右利きが基本なので、左利き用に教えられないので、通常の人よりも覚える時間がかかりますし、会社としてはデメリットしか無いのに大手はそれすら無視することが多々あります。
コメント